*Le soleil*

□眼鏡越しの恋人
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今日は貸切やし、何かしようかなー。

そんな、ほんの軽い気持ちだった。


今日、貸切公演してくださってる所で
もうすぐ自分の主演作を流して頂くわけだし。
お客様にも、何度でも見てもらえるように良いアピールになるかも。


本当に、それだけだったんだけど。




「そういうの、するなら言ってよ」




舞台袖に引っ込んだ後、アルバート様・・・じゃなくて、チカさんに言われて。

思わず、ぴよ?となる。




「そういうのって?」

「眼鏡」

「あー、これどうですか?」

「・・・反則」

「え、何で?」



似合わなくて笑っちゃうとか?

一応、自分なりに形とか色にもこだわってコレにしたんやけどなぁ。

主演作のタイトルにちなんで、銀縁の眼鏡にもしたし。

執事として最初に出る服も銀で丁度いいし、他の衣装とも相性悪くないし。




「あ、チカさん待ってー」



でも、笑う風でもなくスタスタとホリゾントを歩くチカさんを追いかける。




「ねー、何が反則なん?」

「・・・・・」

「そんなおかしい?」

「・・・いの」

「え?」

「かっこいいんだってば!」




え、予想外。

しかも言い方とか表情が、こないだのコンサートの「うるさーい!」にそっくり。

そんなことを言ってくれる、この人が可愛くて。

思わずニヤけてしまう私の顔を見て、ちょっと顔が怖くなったけど。

でも、照れてるだけだってわかってしまうのは

それだけ一緒に過ごしているから。

ね、チカさん。




「今度からは言って!心臓に悪い!」




捨て台詞を残して、早歩きから逃げるように早足に変えて
次の場面のスタンバイへとチカさんは行ってしまった。



心臓に悪いだって。


・・・かわいいー!



ドキドキさせられるのはいつも私だけなのに、
そんな私を思うままにドキドキさせる、涼しい顔をしてるあの人を
私が、ドキドキさせられた、ってことだよね?


あんな可愛いチカさん見れるなんて。

思いつきバンザイ!



逃げられたって、いいもん。

どうせ舞台上でも、ほとんど一緒に出てるし隣にいるし。

むしろお世話するために、触ってるくらいだし。

今日は、いつもよりもっと、たくさん見つめちゃおうっと♪



「やっぱりピンクレディーは踊ると楽しいよねー」

「うん。全部踊れるもん」

「世代だね」




照れて去っていった後は、何事もなかったように普通に喋ってるけど

私、気付いてますからね?

今日のチカさん、いつもよりも私を見つめてるってこと。

嬉しいから、やめてほしくないから、黙ってるけど。



あー、何か今日は特に良い日だなぁ♪

アドリブもうまくいったし、チカさんドキドキさせられたし
終わったらファンの方とのイベントもあるし、明日はお休みだし。


で、今日の夜もチカさんに会えるし。

うん、まだまだ頑張れるー!




そんなテンション高いまんま、無事にお芝居が終わって。

30分でのお化粧替えに集中していたら、隣のトップスターから



「・・・ショーでは眼鏡しないの?」



ショーで眼鏡とか、邪魔やし!

なんて、心の中でツッコんだのは置いといて




「そんなに気に入ったん?」

「うん」

「眼鏡かけただけやのに?」

「ゆみこはさ、今回のお芝居とショー含めたら、どの私の格好が好き?」

「え?」

「どうぞ」

「え、えーと・・・全部好きですけど、ガロかな」

「ほら」

「何がですか」

「ガロはサングラスでしょ?眼鏡類を侮っちゃあかんでー」

「あー」



なるほど。

そっかー。そんなに気に入ってくれたんだ。


ふーん、そっか♪
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