*Le soleil*

□ライバル?2
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しがみつかれて5分。

んー・・・10分くらいかも。

抱きしめてくる腕の力は、一向に弱まらない。


よしよし、と頭を撫で続けているけれど
目の前の体はぎゅっと硬くて、顔も伏せられたまま。



『さっきから、ずっとハマコさんにべたべたして・・・嫌』



ハマコと顔を見合わせて思ったことは、多分一緒だろう。


−え、ハマコ?−


と、意外な人選すぎて笑いそうにもなったんだけど。
抱きしめてくる寸前の、くしゃっとしたゆみこの泣き顔を見てしまったら・・・
驚きと、自分の大人気なさを痛感して笑えなかった。



「ゆみこ」



声をかけたら、ピクリと頭が動いて。



「・・・ごめん、ヤキモチ妬いた」



あんなに自分から折れたくなかったのに、あっさりと謝罪の言葉が口からこぼれた。

・・・やっぱり、ヤキモチ妬いてくれたのが嬉しかったからかも。



「ひろみと仲良いのはわかってるんだけどね。
 それも微笑ましいなとは思うんだけど・・・」



毎度のことだけど・・・やっぱり、むっとしてしまう。
だって、ひろみ相当ゆみこのこと好きだもん。
そんな人と仲良くしてるの見たら、やっぱり不安になってきて。
や、別に仲が悪くなってほしいとかじゃなくて。
ほわほわした2人が仲良い姿を見ると、癒されたりもするけど。
でもさー、そっちこそべたべたしすぎだと思うんだよね。


抱きしめたまま、素直に自分の気持ちを言ってみる。

私が大人気ないヤキモチを妬く人だって、ゆみこも解ってるだろうし。



「・・・やもん」

「え?」


腕の中で、ゆみこが何かを呟いた。

聞きなおすと、ゆっくりと顔を上げた目の前の人は
赤い瞳をまだ潤ませたまま、口をきゅっと引き結んで見つめてくる。



「ハマコさんやって・・・そうやもん」

「何が?」

「チカさんと、、めっちゃ仲良い」

「・・・まぁ、同期だしね」

「いっつも一緒にいる」

「同期だから、座る席も隣だし」


数少ない同期。
明るくて朗らかで優しい、お母さんみたいな。


「・・・大好きなん?」

「え?そりゃあ・・・うん、大好きだけど」



・・・なんか、抱きしめられてる腕の力が強まった気が。



「・・・して」

「え?」

「キス、して」

「え、ゆみこ?」

「今して」



急に何を言ってるんだろう。

や、滅多にない嬉しいお願いだけど、でも。



「どうしたの?ゆみこ」

「チカさんとキスしたい」

「えーっと・・・や、私もそりゃ出来るならしたいけど」

「・・・してくれんのですか?」

「だって、、ほら、ここってリフレッシュルームだから」

「だから?」

「だ、だから誰が来るかも分からないし」

「それで?」

「見られたら大変だし、それに・・・」

「何ですか」

「・・・ハマコに怒られるから」



こないだ楽屋でゆみこを抱きしめてたのも、何だかんだ見られていて
正直、片身が狭い。目線で色々と訴えられるのだ。
怒らせると怖いし、私もさすがに反省しないとなって思っていて。



「・・・言うと思った」

「え?」

「私のお願いはダメで、大好きなハマコさんのお願いやったら聞くんや」

「ちょっ、え?」
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