*sketch*

□離れる日が来ても
2ページ/7ページ

「っひゃー・・・」

「ちょっと、休憩しよう」

「はい・・・」

「手が、痛すぎる」

「ホントですよね〜」



となみの退団公演となるゾロでは、フェンシングで戦うシーンがある。
本公演まで、もう時間がない。
見せ場となる殺陣は、私もとなみも苦戦していて。
今までやってきた殺陣と違って、フェンシングは剣と剣をちゃんとあてて戦わなくてはいけない。
「そういうフリ」じゃ通用しないというわけだから、
フェンシングに慣れるのにも少し時間がかかって。
それに、手が結構痛くなるのがネック。
痛めてしまわないようにしないと。



「どう?憧れのゾロは」

「もうっ、すごく嬉しいです!」

「あはは、今目がキラッてした」

「だって、念願ですよ〜!」

「そうだよね、嬉しいよね。私も嬉しいし」

「水さんも嬉しいんですか?」

「うん。カッコイイし、やりがいがあるし」

「水さんのゾロ、素敵です」

「ありがとう。となみも、何かキリっとしてきたよね。凛々しさというか、勇ましさというか」

「ホントですか?よかった・・・」

「となみの持ち味にはなかったからね」

「そうみたいなんです・・・自分ではキリっとしてたつもりなんですけど」

「え、どこが。すごくフワフワ〜ってしてるけど」

「えー、そうですかー?」



正直、こうやって退団公演の練習をしていても実感がわかない。
次の公演も、変わらず隣にいてくれる気がして。

何を考えてるんだろう。
もう、次の相手役も決まったっていうのに。


でも、彼女が退団するまでは考えられない。
今の私の相手役は、彼女なんだから。
その日まで、自分なりにとなみを大切にしたい。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ