BOOK3
□やくそく〜願いの糸〜
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ぱんっ、ぱんっ
元旦。
それほど大きくはない神社の賽銭箱の前で、小さな二対の手が打ち鳴らされた。
初詣に来たリクオとカナだ。
この春に小学校に上がる二人は、親の許しをもらって一緒に近所の神社へ来た。
もちろん子供だけで出かけさせられるはずもなく、首無や青田坊が陰からこっそり見ているのだが、二人はそれを知らない。
階段を下りながら、リクオはカナにきく。
「カナちゃんは、かみさまになにをおねがいしたの?」
「んっとね、みんながことしもげんきでいられますようにって」
「そっか。ボクもおなじ!」
リクオは最後の数段を、えいっと飛び下りた。
カナはお行儀よく一段ずつ下りる。
「リクオくんもおなじ?」
「うん。みんなが、げんきにいたずらできますようにって」
「いたずら?」
笑顔のリクオに、カナはこてんと首を傾けた。
「うん。おじいちゃんとか、うちのみんなのいたずらのおはなし、おもしろいんだよ!」
「まってよ。それって、“ようかい”とかいわないよね?」
カナがこわごわ聞くと。
「そうだよ?」
何を当たり前な、という風に、今度はリクオが首を傾けた。
「うそだぁー!ようかいなんていないもん!」
「いるよ!すっごくかっこいいんだから!」
「いや!こわいよ!」
「こわくないよ!」
「それいじょういったら、わたし、リクオくんのこときらいになるもん!」
カナはぷいっとそっぽを向いてしまった。
「ご、ごめん!もういわないから…」
手を合わせて必死に謝るリクオ。
カナは納得できないというように、しばらくむ〜っとしていたが、やがて表情をゆるめた。
「しょうがないから、ようかいはいるってことにしといてあげる」
するとリクオは、ほっとした顔を見せた。
「ただし、やくそくしてね」
と、カナは小指を立てた。
「やくそく?」
「うそはつかないって、かくしごともしないってやくそく」
「うん、やくそくする」
リクオも笑顔で小指を出した。
「カナちゃんもやくそくね」
「うんっ!」
二人で笑いあいながら、小指と小指を絡ませて、指切りをした。
数年後、少年の成長とともに約束は破られることになる。
願いの糸が再びより合わされるかは、二人の心次第――…。
《後書き→》