BOOK3
□友よ〜少女たちの心〜
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『妖怪の生息圏』、『美しき妖怪たち』、『妖怪古典便覧』……。
そんな、シュールというか何というか……な背表紙が並ぶ書棚を、鳥居はじっくり目で追っていた。
一冊を引き抜いて、パラパラとめくってみる。
「なんか面白そうな本あった〜?」
本と棚板のすき間から、巻と目が合った。
「うん、色々あるよ〜」
鳥居は笑顔で答える。
巻は、いったん鳥居の視界から消えた。
体を横たえ、時がいたずらに過ぎるのに耐える、人生の節のわずかな日々。
……要は、暇をもてあましていた春休み。
たまには図書館にでも、と言い出した鳥居に、巻が付き合うことになった。
どうせならと、二人は電車を乗り継いで、大きめの公立図書館まで足を伸ばした訳だ。
書棚を回ってきた巻は、鳥居の隣に立つ。
鳥居が向いている棚のジャンルを見て、嫌そうな顔をした。
「げっ。まさかあんた、清継病がうつったんじゃないだろうね?」
「清継病って…」
苦笑いの鳥居だが、気持ちはわかる。
鳥居が物色していた本は、かの友人が大好きな、妖怪や地方の伝承に関するものばかりだからだ。
だけど、鳥居がそんな本を見ていたのは、好奇心からだけではない。
「巻…。覚えてるよね、先月のこと…」
鳥居は声のトーンを落とす。
それに巻ははっとした。
周りに人がいないのを確認して、同じように声をひそめる。
「忘れる訳ないだろ」
巻の瞳が左右に揺れる。
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