BOOK3

□流れ出た真紅
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いいものが手に入った。

イタクは若干気を逸らせながら、遠野の森を木から木へ馳せていた。

衣の上から懐のものを確かめる。

これを見せれば、きっと彼女は興味を示すだろう。

ただし、他の連中に知られてはならない。

知ったら掠め取るに違いないからだ。

闘技場を遠目で見れば、そこに探す対象はいない。

ならばと、イタクは屋敷に爪先を向けた。

厨で彼女を見つけた。

どうやら、お得意のレモンの蜂蜜漬けをこしらえているらしい。

幸いにも一人だった。

「冷麗」

イタクは戸口から声を掛ける。

彼女は首だけ巡らせて、あら、と言った。

「イタク、どうしたの?」

「これを」

懐から件のものを取り出す。

「なぁに、それ?」

案の定、冷麗は食いついた。

“それ”をまじまじと見て、

「ねぇ。それって、もしかして……」

勘が働いたのか、瞳が期待で丸くなった。

「ヤボ用で人里の近くまで行ってな。そこから持ってきた」

「まぁ。どうやって入手したのか……は聞かない方がいいかしら」

「…………」

イタクが閉口すると、冷麗は何かを察したか、口に手を当てて微笑した。

「楽しみね」


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