BOOK3
□思慕
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妖怪に襲われると、いつもいつも、笠のお坊さんは助けてくれる。
颯爽と現れて、あっという間に妖怪を倒しちゃう。
そして決まって、少し困ったような顔をするの。
『すまぬ。また巻き込んでしまったな』
お坊さんは、妖怪一家の奴良組が近くにあるせいだ、と言う。
――お願い、そんな顔をしないで。
――だって、奴良くんと友達でいるって決めたのは、私自身だもの。
そうか、とお坊さんは頷いた。
『ならば、何かあったらすぐに拙僧を呼べばいい。夏実がどこにいようとも、駆けつける』
胸の奥がふわっとあたたかい。
けれど同時に、きゅうっと苦しくなる。
ねぇ、お坊さん。
危ない目に逢った時に来てくれるのは、私が奴良くんの友達だから?
それとも、お坊さんが“そういう妖怪”で、それが役目だから?
それなら私は、ずっと奴良くんと友達でいたい。
危ない目に逢ってもいい。
そう思うのは、独りよがりなの?
あなたのそばにいたい。
――お坊さん、私……お坊さんのこと……。
この続きを言ったら、あなたはどう返すのかな?
あの優しい言葉を、信じたい――。
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