BOOK3

□宵伽事
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憧れのあの人を追いかけていたら、幼なじみが立派な人になっていた。

幼なじみの彼は、立派になろうとずっと頑張ってて……たくさん悩んで迷って、その末があの姿で。
親友の成長を見られたみたいな気持ちで、心があたたかくなった。

だけどきっと、話してもらわなきゃいけないことが、まだたくさんあると思うからーー。

「ーーで、そのためにオレの部屋に来たのかい?」

リクオは手中で弄ぶ煙管をくるりと回した。

ただの確認なのに、叱られたみたいにカナは首をすくめた。

「ちょっとだけ、リクオくんとお話したいなって……」

「話をしに、夜中に、一人で、男の部屋にねぇ」

「うう……」

別に彼みたく、他人の家に忍び込む能力を使った訳ではない。
清十字団で奴良組に合宿に来ていたのだから、普通に廊下を歩いて来た。

ただ、周りの妖怪たちには変な目で見られた。
それはそうだ。
カナにとってはクラスメイトで幼なじみでも、彼らにとってリクオは、屋敷の主人であり任侠世界の頭領なのだ。
勝手に部屋に行くのはおかしなことなのだろう。

「三代目のお召し上げか?」と言われたって、よくわからないけれど。

カナはちらりとリクオを見上げた。


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