BOOK3

□淡紅恋色〜花びらを追いかけて〜
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薄紅の梢がさわさわと揺れて、共に舞わんと手招いている。

和風でやたら大きな、古めかしい屋敷をぐるりと回っていた鳥居夏実は、中庭で足を止め、額の前に手をかざした。

「やっぱり大きいなあ。奴良くんちの桜は」

自身の花開くべき時を待ちわびた樹は、五分咲きほどだけれども、芽吹きの季節に彩りを添えている。

女性の紅を淡くしたような色の花びらに誰もが引きつけられる。
艶やかでいて、高貴な姫君のような佇まいの桜は、女の子の憧れなのだ。

夏実は空に手のひらを向けてみる。
少ないけれど、花びらがひら、ひららと舞っている。

……例えば。
この花びらを地面に落ちる前に受け止められたら、恋が叶う?

そんな願掛けめいた考えが、ふと浮かんだ。

実行に移すには子どもっぽい。
けれど、もしかしたら。

この桜が根差しているのは奴良組の本邸内。
『彼』とも関わりのある地だから。

「……うん。やってみよう!」


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