BOOK(献上と頂戴)
□鬼畜な君が素敵すぎて
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放課後の教室、人はほとんど残ってない。
今日こそ、彼が帰る前に捕まえないと。
華の女子高生・アスミ、いざ!
「花開院くんっ!勉強教えてー!」
「断る」
一蹴。
しかも微妙に語尾がかぶってた。
「ちょ、答えるの早すぎるんやけど!」
即答するにしたって、いくらなんでも酷すぎる!
「少しは考えてくれてもええんちゃう?」
「その必要はない。なぜ俺が、大して親しくもない貴様の、空っぽな脳ミソの世話をせねばならんのだ。時間の無駄だ」
あぁ、彼の言葉がいちいちグサグサ刺さる……。
一番ショックなのは、“大して親しくもない”のところ。
仮にも××村から一緒に(なりゆきだけど)旅行した仲なのに!
気をとりなおして。
こういう時は、相手の詳しい分野を攻めるべし。
それなら、いくら無愛想な彼でも、悪い気はしないはず。
「陰陽師の勉強したいんや。花開院くんに教えてほしいんよ」
ちょっと上目遣いをしてみる。
これなら……!
「無理だ」
玉砕。
「陰陽師の膨大な知識が阿呆鳥の頭に収まるはずがない上に、軽々しく学べると思っている事が不愉快だ」
ごもっともです。
けれど。
動機が不純だろうと、好きな人の事を知りたいのは、恋する乙女の願いな訳でして。
「え、ええよ!そんなら、妹さんに聞くわ!」
「はぁ?」
彼は思いっきり眉を寄せた。
「私、妹さんのケー番知ってんねんで?」
勢いでケータイ出したけど、そんなん知らん!
彼は仏頂面の手本みたいな顔で、ずかずかと近づいてくる。
やっぱり、彼に小細工は通用せんかったか――。
――と、ケータイを取り上げられた。
「あいつはまだまだ半人前だ。素人に間違った知識を教えられたら敵わん」
「へ?」
彼はそばの椅子にどかっと座った。
明らかに自分の席じゃないのに、偉そうにふんぞりかえる。
「陰陽道の基本は、その名が示す通り、陰と陽。そして世界を形成しているとされる五行――木火土金水だ」
「え?」
いきなり耳慣れない単語の羅列が始まった。
「何をぼけっとしている。陰陽師の勉強をしたいと言ったのはどいつだ」
「は、はいっ!私です!」
彼が睨むと迫力ある。
私は慌てて、彼と向かい合う形で席についた。
もちろん自分の席じゃないけど、まぁいいや。
二人きりの授業――アスミ、頑張ります!
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