BOOK(献上と頂戴)
□忠誠。
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【忠誠。】
「ねぇ、あんたのそれって牛鬼殿の物真似?」
「ちげぇよ!」
皮肉ったら案の定目くじら立てて怒ってきた。口の悪さと啖呵のきり方は奴良組でも一級品だと思えるもの。
「邪魔でしょ?あげればいいのに」
「お前には関係ないだろうが!」
だって顔が隠れるじゃない。最近気付いたのよ、意外と良い顔してるんだって。折角なんだから顔をもっと出したら良いわ。
けれどそうしないのは、結局は牛鬼殿を真似てるんだわ。
「牛鬼殿を慕ってるんでしょ…」
「当たり前だ!」
力強く叫んだ顔は誇らしげ。そうよ、あんたは牛鬼組若頭。そうやって気力に満ち溢れている顔が似合ってる。周りを見れないくらいの真っ直ぐな瞳が似合ってるわ。
「…」
「…まぁ、慕っちゃいるけどよ」
「?」
「お前…には負けるからな…!」
まさかそんな言葉を聞けるとは思ってもみなかった。彼がそんなことを言うなんて、きっとこれは夢に違いないわ。そう思いたいの。
顔を火照らせて私を見つめる瞳は正気そのもの。流れる沈黙が絶えることはなく、ただただ互いに膠着状態。どうしたらいいの?おかしくなりそう。突然過ぎて、涙が溢れそう。
「お前の忠誠はアイツなんだろ…」
「…もちろん」
「その忠誠、いつか俺に向かわせてやるからな!」
あんたに忠誠なんか誓うもんですか。これはリクオ様に捧げたの。何があっても揺らぎはしない。あんたがどれ程足掻いたって、絶対に譲ることは在りはしないのよ。
ただ、誓うなら、もっと違う別の何かになると思うわ。