BOOK(献上と頂戴)
□奴良夫婦の一日
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そして夜。
鯉伴は幼妻の膝に頭を乗せ、満足げに顔を埋めていた。
「昨日もやったんだし、全然汚れていないわよ?」
「細かいことは気にするな」
最近は、風呂上がりの耳掃除が日課になりつつあった。
当然、溜まる垢もない。
若菜はふぅ、と優しく息を吹きかける。
それが仕上げの合図だ。
鯉伴はくすぐったそうに身をよじった。
「そろそろ寝るか」
鯉伴が先に布団に横になり、若菜も隣に潜り込む。
「今日も疲れたろう」
「えぇ。誰かさんがべったりくっついてくれてたお陰でね」
「はて、誰だろうな」
「さて、誰でしょうね」
一瞬だけ視線が交差して、同時に顔を綻ばせる。
「おやすみ、若菜」
「おやすみなさい、鯉伴さん」
こうして、夫婦の一日が終わるのだった。
《後書き→》