BOOK2
□ただ二人で…
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婚儀が滞りなく済んだ、その夜。
妻帯者となったリクオは、妻が待っているであろう部屋の障子を、静かに開けた。
明かりのない部屋に、並べて敷かれた蒲団。
そのわきに、彼女は端座していた。
まっさらな単衣に身を包んだつららは、息を呑むほど美しかった。
ざわつく心を悟られまいと必死に鼓動を抑えつつ、リクオは隣に腰を下ろす。
「本当にいいのか?」
そう問えば、彼女は胡乱な様子で首を傾げた。
「オレと結ばれても、子供はできねぇ。それでも…?」
宿敵だった羽衣狐がこの世を去ってなお、忌まわしい呪いは残ってしまった。
女としての幸せを、自分は与えてやれない。
それでも、彼女は共にいてくれるのか。
「はい」
そっと、手が触れた。
つららがその細い指で、骨ばった手を包んでくれる。
「私はただ、リクオ様のお傍にいられるだけで幸せですから」
「つらら…」
あぁ、どうして。
「…そうか」
愛しいひとのたった一言で、その微笑みで、心が洗われる気がするのは何故。
壊さぬように、リクオはそっと妻に覆いかぶさった。
「つらら…ずっと一緒にいよう」
「はい、リクオ様…」
今この瞬間は、ただの男と女――…。
《後書き→》