BOOK2

□こんな再会
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奴良組で初めての出入りの夜、陰陽師に会った。

自分たち妖怪にとって陰陽師は宿敵。

もう会うこともないだろうし、会いたくもない。

そう思っていたのに。

「なんか騒がしいなぁ…」

奴良組屋敷に戻って来てから、馬頭丸は暇をもて余していた。

相棒の牛頭丸は、部屋に入るなりさっさと寝てしまった。

なのでぶらぶら歩いていたら、母屋の奥からなにやら言い争う声が聞こえる。

「――大人しく泊まっていきなさいったら!今あなたを帰すと、私がリクオ様に怒られるの!」

これは雪女のつららだ。

「泊まっていけってことは、誰か客でもいるのかな?」

続いて別の声がする。

「――なぁにがリクオ様やっ!誰が妖怪なんかに世話になるかっ!」

こっちは知らない女の子。

いやしかし、独特の喋り方には聞き覚えあるような…。

馬頭丸が首をひねると、明かりの点いた部屋から少女が飛び出した。

「私は帰る!ジャマすんなっ!」

と、その少女が馬頭丸に気づく。

「あ」

「ん?」

あの子は確か――。

「あぁーーーーっ!!あんたは捩眼山ん時の覗き魔妖怪っ!!」

「げっ…、あの時の陰陽師…!」

それで見覚えあるはずだ……じゃなくて。

「成敗したるーーー!!」

彼女はどこからか札を取りだし、それを振りかぶって迫って来る。

「いやいや、そんなの振り回したら危ないから…!」

「やかましい!!」

叫びながらバタバタと走って来て、あと数歩のところで――。

何もないのにつまずいて、派手にすっ転んだ。

顔面をしたたか打ち付けて、そのまま身悶えている。

「え〜っと、大丈夫?」

馬頭丸は少女の頭のそばにしゃがみ、つんつんとつついてみた。

すると。

「おのれ妖怪!」

がばっと起き上がった少女は、頭のてっぺんを馬の骨に強くぶつけ、再び沈むこととなった。

馬頭丸は骨の位置を直す。

さすがに学習するのか、今度はじりじりとほふく後退してから、ゆっくり起き上がった。

「おのれ…よくもやりよったな妖怪!」

「いや、明らかに勝手に転んで勝手にぶつけたと思うんだけど…」

まなじりを吊り上げて睨まれても困る。

「次に会うたら滅したる!覚えとけーっ!」

ドタバタと派手な足音で少女は去っていった。

「なんだったんだろう…?て言うか、また会うこと前提?」

そんな簡単にやられる訳はないと思うが、やはり会わないにこしたことはない。

……とりあえず。

「面白い子だなぁ」



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