BOOK2

□あなたにtrick、君にtreat
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やがて。

ひとしきりくすぐって夏実が疲れた頃、黒田坊はようやくその腕から抜け出した。

笑いすぎてひきつった腹筋が痛い。

「やれやれ…。夏実殿は突拍子もないことをしてくれる」

まさか悪戯が、単純にくすぐることだとは思わなんだ。

年相応といえばそうだが、いささか落胆したことは胸の内に秘めておこう。

「お菓子があるのに悪戯をされては、かなわんな」

黒田坊は懐や袖の内を探ると、そこからお菓子を取り出した。

クッキー、飴、大福、かぼちゃのタルト、花林糖、チョコレート…。

目を丸くする夏実の前で、和洋様々なお菓子が次から次に出てくる。

「これ、どうしたんですか?」

「いや、なに。貰い物だ」

と言うのは、奴良組でお菓子作りにいそしんでいた女性陣から味見に渡された半分。

あとの半分は、そこかしこでがっついていた小妖怪からくすねたものだ。

「食べてみたのだが、拙僧には少し甘くてな」

少女を見れば、見つめてくる大きな瞳とぶつかった。

それが本物の猫のようで、黒田坊は目を細めた。

「夏実殿、一緒に食べないか?」

「はいっ!」

嬉しそうに首を縦に振る夏実の頭を、黒田坊は子猫にするように撫でた。

大人のあなたにはいたずらを、あどけない君には甘い甘いお菓子を――。



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