BOOK2

□寂しがりやな君だから
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「そろそろ帰らなきゃ…」

愛しい子の学校が終わる夕方くらいに家に突撃して。

遊んで、おしゃべりして、イロンナコトしてたら、だいぶ夜も更けてきた。

妖怪の自分はこれからが本番だけど、人間の彼女は寝なきゃいけない。

名残惜しいと思いつつ布団から這い出た馬頭丸は、しかし、元の位置に戻った。

「ゆら?」

振り向けば、愛しい子がむくれた顔を枕から半分覗かせている。

「ゆら、どしたの?」

すると、可愛くない言葉が返ってきた。

「うるさい…。…馬頭丸なんかとっとと帰ればええんや…」

その声は語尾が消えていて。

馬頭丸は口許に笑みを乗せる。

「ねぇ、ゆら」

「うるさいったらうるさい…」

ついに枕に埋まってしまった。

笑いを耐えながら、馬頭丸はゆらの手に自分のそれをそっと添える。

「ゆら。言ってることとやってることが違うよ?」

そして、自分の衣を握りしめているゆらの手を、優しくはがした。

そのまま自分の指と絡ませる。

「大丈夫。そばにいてあげる。ゆらは寂しがりやさんだからね」

「違う…寂しくなんかない…」

「うん。だから一緒にいる」

「…違うったら違うんや…」

こもった声はもはや意味を成していない。

痛いくらいに絡んで離れない指が、きっと本音。

「そばにいるよ。だからおやすみ、ゆら」

「…馬頭の…アホぉ〜……」

しまいには寝言と化して、ゆらは寝息をたて始めた。

「そばに…一緒にいるからね、ゆら」

苦しくないように愛しい子の顔を自分側に向けさせて、馬頭丸はその下に自分の腕を滑り込ませる。

そして、ゆるゆると瞼を下ろして安らぎの眠りについた。



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