BOOK2
□trickでtreatな夜
1ページ/2ページ
「ねぇねぇ、ゆら〜」
机替わりのちゃぶ台に向かって手を動かしているゆらに、馬頭丸は嬉々として寄っていく。
「なんや。私は今、宿題という敵を倒さなあかんねん。静かにしとき」
そっけなくあしらわれるが、馬頭丸は気にしない。
「知ってる?今日はお菓子を貰えたり、悪戯をしてもいい日なんだって」
「はぁ?なんやそれ」
「ほら、えーと…"はろうぃん"とか言うの」
そう言われてゆらは、そう言えば十月三十一日だったなと思い返す。
それはどうでもいいが、うるさいので黙ってほしい。
「そんなら、これでも食うとき」
と、夜食に買っておいたかりん糖――ちなみにネギ味噌味――を馬頭丸の口に突っ込んだ。
突っ込まれた馬頭丸は、バリバリと噛んで飲み込んでから、口を尖らせる。
「ゆらってば冷た〜い」
「私は忙しいんや」
「む〜。じゃあ、悪戯しちゃう!」
と、馬頭丸は後ろからゆらに覆い被さった。
「ひぃやあぁぁぁっ!どこ触ってんねんっ!?」
「ゆらのぺったんこな胸?」
絶叫するゆらに、馬頭丸はしれっと返す。
「言うなアホ!!さっさと離れ……ひゃっ」
腹に巻き付いた腕でぐっと密着させられて、思わずゆらは上擦った声を出した。
「今日はずーっと悪戯してあげるからね」
「いらんわっ!はよ離せ!!」
「悔しかったらゆらも悪戯すればいいのに」
いつか絶対滅してやる、と、本気で抗えない刺激に堪えながら思うゆらであった。
《後書き→》