BOOK2

□手毬雪〜声〜
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 まるたけえびすに
 おしおいけ
 あねさんろっかく
 たこにしき


何処からともなく聞こえた音に、牛鬼はふと足を止めた。


 しあやぶったか
 まつまんごじょう


耳を傾けると、女性が歌っているようだ。

繊細で美しい声。


 せったちゃらちゃら
 うおのたな


流れるようなそれを追っていくと、もはや馴染んだ一室に辿り着いた。

ならば声の主は分かり切ったこと。

障子をからりと開けると、雪女が窓の桟に腰掛けていた。

「どうしたの?」

「あ、いえ・・・」

「もしかして五月蝿かったかしら」

「いえ、そんなことは・・・!」

雪女が自分に気付いて、唄うことを止めてしまったのが残念だ。

しかしこのようなことは、自分が口に出していいものか。

・・・構わぬ。

「もし宜しければ・・・今一度聴かせては頂けないでしょうか」

雪女は意外そうな表情を浮かべたが、それはすぐに微笑みに変わった。

座ってと言う彼女の言葉に従って、牛鬼は大人しく腰を下ろす。

そして雪女は姿勢を正すと、静かに息を吸った。



 まるたけえびすに
 おしおいけ


 あねさんろっかく
 たこにしき


 しあやぶったか
 まつまんごじょう


 せったちゃらちゃら
 うおのたな


 ろくじょうひっちょう
 とおりすぎ


 はっちょうこえれば
 とうじみち


 くじょうおうじで
 とどめさす



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