BOOK2
□闇、妖
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夜の帳が下りても、明るい街と言うのはいつの時代もあるもので。
月の下に目覚める人間の作り出したその空間を、黒髪を靡かせて一人の女が縫うように歩いていく。
美しい姿を男たちが見逃す筈はないが、後を追って気がつけば消えていて、首を傾げるのだった。
「雪麗殿!お待ちください!」
「遅いわよ、牛鬼」
大して振り向きもせずどんどん進んでいく女に、大柄な男は必死に声をかける。
「このような所に来ていることを総大将が知ったら・・・」
「だからあなたを連れて来たんじゃない。下素な人間どもが寄ってこないように」
「いや、問題はそこではなくて・・・雪麗殿!」
男の訴えなど聞く耳持たず。
彼女は道の両側に連なる屋台を覗いては、これ可愛いなどと眺めていた。
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