BOOK2

□春の日溜まりに
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取っ組み合いながらじゃれる息子と夫を、カナは楽しそうに眺めていた。

父子のケンカは刀こそ出てはこないが、息子が父を真似てか「めーきょーしすいー」だのと叫びながら新聞紙を丸めた疑似刀を振り回すものだから、組員…特に小妖怪たちは冷や汗が止まらない。

しかし、危ない事はないと二人を信じているからか、もしくは天然か、カナはのんびりしたもの。

「ほんと、仲良いわよねぇ」

呑気にそう言ったのは、カナの姑にあたる若菜だ。

「リクオも、すっかり良いお父さんになっちゃって」

「はい!」

カナと若菜は互いに微笑んだ。

ちなみに取っ組み合いの火種は、母であり妻であるカナの膝の独占権と言う、激しく平和でどうでもいい事なのだが、本人たちはいたって本気。

やがて息子が、父の腕をかいくぐって母の胸に飛び込んだ事で、この日のケンカは終了した。

ある春の日の、桜の蕾が開く頃の事だった。



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