BOOK2

□無自覚な君は
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「――何か質問はないか?」

「じゃあ…一つ聞いてもいいですか?」

「うむ」

「お坊さん、暑くないの?」

「え…」

蝉の大合唱をBGMに、夏休みの宿題を広げる夏実。

黒田坊はその横から覗き込んでいる。

エコ設定で動くクーラーのおかげで、夏実の部屋は快適そのものだが、黒田坊の法衣は(いくら笠を外していても)見るからに暑苦しい。

よって、夏実の質問は至極当然だろう。

「いや…拙僧は暑さなどなんともない。その、鍛えているからな」

「そういうものですか?」

「そういうものだ。さ、勉学の続きだ。昼前に終わらせてしまうのだろう?」

「は〜い」

素直にワーク集に向き合った夏実に、黒田坊は内心ほっとしていた。

まさか「妖怪だから」なんてことは言えない。

その妖怪である黒田坊がなぜ朝から、家庭教師まがいのことをしているのか。

発端は夏休み直前。

恒例の宿題に夏実が「お坊さんに教えてもらえたらな〜」とこぼしたらしい。

それをたまたま聞きつけたリクオが気をきかせたのか、黒田坊に半ば強制的に頼んできたと言う訳だ。


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