BOOK2

□無自覚な君は
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その黒田坊は現在、理性を総動員させていた。

「ねぇ、お坊さん。ここなんですけど」

「ん?どれ」

夏実に近づくと、ふわりと良い匂いがする。

…これは不可抗力であって、決して匂いを嗅ぐのが目的ではない、うん。

ちなみに夏実の服装は、キャミソールにショートパンツ。

夏だから何もおかしくないのだが、これが黒田坊にとっては大問題だった。

何しろ肩や背中、太ももなどが露出している上に、少し動くだけで更に際どい部位まで見えそうになるのだ。

これを誘われていると言わずして、なんとするか…。

「終わった!」

「あ、おぉ、そうか」

…助かった。

「ん〜〜〜っ」

夏実は両腕を上げて伸びをする。

内側の日に焼けていない白い肌が、なんとも旨そ――いやいやいや。

黒田坊は焦って首を振った。

これでは欲情しているようではないか。

若い娘になぞ、己は断じて――。

「午前中にノルマを終わらせちゃうと気持ちいいな…って、お坊さん?どしたの?」

「い、いやっ!どうもせんぞっ」

「そう?」

「うむ!」

夏実は不思議そうにしているが、さして気にはしないようだ。

「そうだ。お坊さん、喉渇きません?」

「あ、あぁ…まぁ…」

正直、ものすごく渇いた。

「いいものあるんです。持って来るからちょっと待っててくださいね!」

ぱたぱたと部屋を出て行く夏実を見送って、黒田坊は頭を抱え深く長い溜め息を吐く。

「勘弁してくれ…」

思わず本音がこぼれるのだった。



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