BOOK2

□いつからだろう
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――いつからだろう、力では敵わなくなったのは――。

「イタクっ…、痛いわ…っ」

手首を木に強く固定されて、目の前には彼自身。

少年らしく小柄だった体は、精悍な青年のそれに変わりつつあった。

――いつからだろう、彼が真摯な瞳をするようになったのは――。

「冷麗…」

熱っぽく見つめられて、心に何かが流れ込む。

切なそうな声が鼓膜をふるわせた。

――いつからだろう、彼が官能な意志をもって、自分に触れてくるようになったのは――。

「んっ…」

ぐっと首筋に顔を埋められ、肌を吸われる。

それに嫌悪を感じないどころか、快感すら覚える自分がいる。

―――いつからだろう、彼の中に“男”を見るようになったのは――…。

「なぁ、冷麗…。オレは、お前が…っ」

「待って」

理性をどうにか保って、彼を制止する。

うん、まだ大丈夫。

「なんだよ。この期に及んで、まだ誤魔化す気か」

「違うわ。イタク、あなたの言いたい事はわかるの」

「だったら…!」

ぐっと迫ってくるイタク。

「イタク…。あなたがこの先に言おうとしている事…その意味を、ちゃんとわかってる?」

子供扱いしている訳じゃない。

けれどこれは、彼のため。

「わかってるさ…。オレだってガキじゃねぇ」

「そう。なら、いいの…」

彼が覚悟を決めたのなら、自分も腹をくくらなくては。

「冷麗。オレは、お前のこと――」

彼は今まで聞いたことがないくらい、熱く甘く、囁いてくれた。



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