BOOK2
□花筏
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淡い紅色の花びらが空を舞う、学校からの帰り道。
隣を歩くつららが残念そうに肩を落としている。
「あぁ…桜が散ってしまいますね」
「そんなに残念?」
リクオが首を傾げると。
「それはもちろん!だって桜は、リクオ様が百鬼の主たる象徴ではありませんか!」
と、力説された。
「え、そう…?」
「そうです!夜のお姿の、なんと麗しく凛々しいことか…。我らしもべのみならず、敵をも魅せる畏…」
「おーい、つららー?」
うっとりと語るつららに、リクオが呼びかける。
「それなのに、散ってしまうなんて…!葉桜はリクオ様には似合いません〜!」
リクオは葉桜と“自分”を想像してみた。
…まぁ確かに、少々間抜けではある。
「散った桜…そうだ!」
ぽんっと手を打って、リクオは頭を抱えるつららの顔を覗き込んだ。
「つらら!」
「ひゃっ!?」
「いいもの見せてあげる!ちょっと来て!」
リクオはつららの手を取ると、駆け出した。
「あの、リクオ様…!?」
「いいから、いいから!」
いたずらっぽく笑う少年と、戸惑いながらも従う少女。
それはまるで、初々しい恋人同士のようだ。
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