BOOK2
□陽光と驟雨に身を寄せて
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不意に、頬に何かが落ちてきた。
訝しんで見上げれば、先ほどまでなかった雲が姿を見せている。
そこからの落下物は、次々に肌や服を濡らしていく。
「うそっ、夕立!?」
夏実は慌てて立ち上がり、顔の前に手をかざした。
「予感はあったが…やはり降ったか」
己の勘が正しかった事を、黒田坊は身をもって知り、夏実の手を引く。
「早く、雨の当たらない所へ」
「は、はい!…あぁっ!」
彼に続いて出した足を止めて、夏実は叫んだ。
「どうした?」
「洗濯物、外に干してたんだったっ!今日誰もいないんです!」
「それはいけない。早く帰らねば」
「でも、傘もないし…」
雨足は次第に強まっていく。
右往左往する夏実に、ふわり、と何かが掛けられた。
見るとそれは、彼が常に身にまとっている袈裟だった。
「拙僧が送っていこう。さ、早く!」
促されてひとつ頷くと、夏実は彼と共に駆け出した。
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