BOOK2
□アイすくりーむ!
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季節は夏真っ盛り。
駅前広場の腰掛けスペースに浅く座ったつららは、明らかにソワソワしていた。
そこに大柄な青年…いや、少年が近づく。
「姐さん!お待たせしました!」
「猩影くんっ!」
つららの満面の笑顔は、猩影…ではなく、その手の中に向けられる。
吹き出しそうになるのをこらえて、猩影は買ってきたアイスクリームを差し出した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!わ、可愛い!」
コーンに盛られたそれは、冬によく見かける“あれ”の形をしていた。
「夏の雪だるま、らしいですよ。なんでも、大きいサイズを頼むと、小さいサイズのをサービスしてくれるそうで」
“雪だるま”の言葉に更に目を輝かせて、つららはアイスクリームにぱくりとかぶりついた。
「ん〜、美味しいっ!やっぱり夏はこうでなくっちゃ!」
幸せそうに食むつららに猩影も破顔して、隣に腰を下ろした。
「そう言えば、ごめんね。猩影くん、リクオ様に用事があって来たのに、お買い物に付き合わせちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。急ぐことじゃないんで」
たまさか本家を訪れた時にばったりつららと出くわし、買い物に出るなら一人では大変だろうと、荷物持ちを買って出た猩影である。
まさか寄り道まで付き合わされるとは思わなかったが。
「それならいいのだけど…。でも助かったわ。やっぱり男手があると違うわね」
「そんな…。オ、オレでよかったら、いつでも力になりますよ!」
思わず身を乗り出すと、つららが目を丸くした。
それに気付き、猩影はしおしおと引っ込む。
「す、すいません…つい…」
小さくなっていると、くすりと笑う音が聞こえた。
猩影は顔を上げる。
「じゃあ、またお願いしていいかしら」
楽しそうに笑うつららを、猩影は綺麗だと思った。
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