BOOK1

□哀しみの黒姫
1ページ/2ページ



湿気を含んだ重い空気が
暗闇を包む

音もなく舞い降りるそれは
ゆっくりと、しかし確実に
世界を染めていく


この季節が来ると

人は身を寄せ合って隠れる

まるで
侵されるのをおそれるように

どうして?

こんなにも、美しいのに


答えは
その本質にあった


冷たく儚いその使者は
時として非情に牙をむく

自然の掟に逆らおうものなら
たちまち灯を奪われる


でも、そうじゃなかったら?


本当は
さびしくて哀しくて

誰かと寄り添いたいがために流す涙が
この結晶だとしたら?


ならば
私は舞いましょう

眷族たる姫君が
泣かないように

この闇が晴れるまで
共に――



【解説(もどき)・あとがき→】
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ