BOOK1
□哀しみの黒姫
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湿気を含んだ重い空気が
暗闇を包む
音もなく舞い降りるそれは
ゆっくりと、しかし確実に
世界を染めていく
この季節が来ると
人は身を寄せ合って隠れる
まるで
侵されるのをおそれるように
どうして?
こんなにも、美しいのに
答えは
その本質にあった
冷たく儚いその使者は
時として非情に牙をむく
自然の掟に逆らおうものなら
たちまち灯を奪われる
でも、そうじゃなかったら?
本当は
さびしくて哀しくて
誰かと寄り添いたいがために流す涙が
この結晶だとしたら?
ならば
私は舞いましょう
眷族たる姫君が
泣かないように
この闇が晴れるまで
共に――
【解説(もどき)・あとがき→】