BOOK1

□冷たい熱戦
1ページ/2ページ


睦月の、いつにも増して冷え込んだ夜。

とても静かで・・・いや、静かすぎる。

そんな時は決まって、雪はしんしんと降り積もる訳で。

翌朝、一面の銀世界に妖怪たちは雄叫びを上げた。

我先にと飛び出し、じゃれ合ううちに庭いっぱいを使った雪合戦へ発展していった。

牛頭丸は首をすぼめて、呆れた顔をしながら縁側を通る。

それに気付いた馬頭丸が、手を振って呼び掛けた。

「牛頭丸もやろうよー!雪合戦!」

「けっ。この寒ぃのに、んなことやってられっか。ガキじゃあるまいし」

再び歩き出そうとした彼の側頭部に、雪玉が見事ヒット。

「つめてっ・・・何しやがる!」

「わーい、当たったー」

両手を挙げて喜ぶ馬頭丸。

ぶつぶつ文句を言いながら、牛頭丸は着物についた雪を払う。

「やんないのー?」

「誰がやるかっての・・・」

「あー。もしかして牛頭丸、自信ないのー?」

ぴくり。

牛頭丸が静止。

「寒いの嫌いだもんねー。雪合戦なんてやったら、すぐ負けちゃうかー」

ぴきっ。

額に青筋が浮かぶ。

「あぁ分かった!そんなにオレと勝負してぇなら、やってやろうじゃねぇか!」

「わーい!逃げろーー!」

雪玉を固め始めた牛頭丸に、馬頭丸とその他の妖怪たちはわらわらと散っていく。

その頃、居間では。

「どっちが子供なんだか・・・」

「でも楽しそうだね」

コタツでアイスを食べるつららと、みかんを頬張るリクオ。

「つらら。みんなにあったかいお茶でも用意してあげなよ」

「そうですね」

つららは食べかけのアイスを凍らせた。

「どうせなら、うんと熱くしてやろうかしら」

冷たい熱戦は、まだまだ続きそうだ。



《あとがき→》
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ