BOOK1
□男酒
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盃をくいと仰げば、そこにすかさず並々と注がれた。
じろりと睨むが、注いだ本人はしれっとしたもの。
仕方なく、再び盃を傾けた。
「――なぁ、牛頭丸」
不意に声がかかる。
「若頭って何なんだろうな」
その表情は丁度陰になっていて、うまく読み取れない。
「そいつは誰かに教わるもんじゃねぇ。自分で見つけるもんだ」
すると楽しそうな笑い声が返ってきた。
「お前ならそう言うと思った」
「…やっぱり気にくわねぇ」
呟いた言葉が聞こえたのか聞こえていないのか。
長髪の青年は盃を目の高さまで掲げた。
たっぷり一呼吸分は置いてから、紅い着物の青年も同様に掲げる。
水面が静かに揺れた。
月を肴に、預ける背中
言葉無いのが男酒――
《後書き→》