BOOK1
□受け継ぐ未来
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「…本気ですか?人間の娘を娶るなんて」
首の浮いた男は目の前の背中に問い掛ける。
「おうよ」
朗らかに答える彼は、妖仁侠総元締めの二代目大将。
その身に妖の血を半分流し、名を鯉伴と言った。
「首無よ。お前さんは笑うかい?」
「…いえ。御館のことですから、きっと何か考えがあって――」
「んなもん、ねぇ」
「はぁ?」
すぱっと言い切った主に、首無は思わずずっこけた。
「俺ぁ若菜に惚れた。それだけだ」
「あ、あなたと言う方は…」
首無は体勢を整えて、一つ溜め息を吐いた。
「子供が産まれたら…首無、お前に教育係を任せたい」
「それはまた、気の早いお話で」
伴侶となる娘とは、まだ契りを交わしてもいない筈。
「受けてくれるか?」
疑問系だが、拒否の言葉は受け付けないかのような口振りだ。
無言を肯定と捉えたか。
鯉伴は煙管をくわえ、旨そうに吸い込んだ。
「しかし御館。そうなれば、確実に妖の…ぬらりひょんの血は薄くなります」
「そん時はそん時だ」
懸念の色を示す首無に、鯉伴はあくまで明朗。
「人間でも妖でも…信念を持って強く生きてくれりゃあ、それでいい」
まだ影も形もない我が子に会うのが楽しみで仕方ない。
そんな顔をしていた。
《後書き→》