BOOK1

□鼓動
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「――ハァ、ハァ、ハァッ……」

夏実は必死に足を動かす。

走っても走っても纏わりつく恐怖。

全身から汗が噴き出すのに、悪寒が止まらなかった。

「アッ――」

足がもつれる。

転びかけるのをどうにか踏みとどまり、前のめりになってまた走る。

「私なんか食べてもおいしくないってば…」

誰に言うでもなく呟く。

もはや真っ白になりつつある頭で、夏実は思った。

――こんなことなら、みんなに待っててもらえばよかった…。


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