BOOK1
□鼓動
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事の起こりは放課後。
清継が新しいコレクションを見せたいと言うので、清十字団のメンバー揃って学校を出た時だった。
「あっ、ポーチ忘れてきた!」
夏実の声に清継らが立ち止まる。
中身はせいぜい鏡やハンカチなどしか入っていないが、乙女にとっては必需品だ。
「ちょっと取ってくるから、先に行ってて!」
「ウチら待ってるよ?」
と言う紗織に。
「ううん、大丈夫。すぐ追い付くから!」
そう言って夏実は一人で学校に戻った。
それが間違いだった。
再び学校を出て歩いていた時。
「グルルル…」
背後から聞こえた、動物の唸り声。
日が暮れかけた夕方では、それだけでも怖いのに…。
「ひっ…!」
それは頭が三つの犬。
明らかに普通じゃない。
どの頭も口をだらしなく開けて涎を垂らし、目は血走っていて焦点が合っていない。
嫌な予感がした。
おかしな犬の目が夏実を捉えた時、予感は的中した――。
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