BOOK1

□Love・Tail
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朝、学校の生徒玄関でのこと。

「カナちゃん!おはよう!」

「リクオくんっ!」

リクオが馴染みの背格好を見つけて声をかける。

すると、彼女の返事と一緒にぴょこんっと何かが跳ねた。

「あれ?」

何か違和感。

とてとて…とリクオはカナに近寄る。

彼女の後ろ姿を確認して、リクオはその訳を納得した。

「珍しいね、カナちゃんが髪を結ってるの」

「あ、うん。なんとなく…」

ぴょこん、と跳ねたのは彼女の毛先。

カナの髪型は、頭のてっぺんで結い上げたポニーテールだった。

慣れないからか、カナはもじもじ・そわそわ。

「リクオくん…。変、かなぁ…」

それにリクオは頭と手を同時に振った。

「ううん!そんなことないよ!似合ってるよ!」

「ほんと!?」

「うん!」

リクオが大きく頷くと、カナは花が開いたようなまぶしい笑顔を見せた。

「それじゃ、私は先に教室に行くね!」

「えっ…」

「リクオくんも遅れちゃダメだよー!」

軽やかに駆けていくカナ。

リクオは思わず手を伸ばす。

しかしそれは、空気を掴んだだけだった。

行き場をなくした手を、リクオはなんとなくにぎってみる。

女の子はちょっとしたことで大人になる。

知らない一面を見つけられるのは嬉しい。

でも。

そのしっぽを掴まえられないなら…。

「いつものままの方がいいかな…」

ふと呟いてから、その意味に自分で頭をひねるリクオであった。



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