BOOK(牛頭雪)
□残暑と女心
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太陽はかんかんと照りつけ、空気はじっとりとしている。
「あっちぃー・・・」
暑いのが苦手な牛頭丸。
長月初めの残暑というだけで不快なのに、汗を吸って肌に纏わりつく着物も、彼の機嫌を悪くする要因だった。
「だから平地は嫌なんだよ・・・」
あまりに暑いので、桶に水をはって頭からかぶった。
一方、暑さに関係なく動いていた雪女は、不審な水音を耳にする。
声からすると、おそらく・・・。
「また、あの男は・・・」
音の出どころを手繰って、庭先に向かう。
「ちょっと、何やって―――」
いるの、とは続かなかった。
確かにそこに、牛頭丸はいた。
しかし普段は着物に隠れている、彼の引き締まった肉体が露わになっている。
おまけに濡れていて、牛頭丸は額にはりついた前髪をかき上げた。
髪や顎からしたたり落ちた雫が胸元をつたい、彼の袴を濡らす。
「おい、雪んこ・・・」
動かない彼女を不思議に思い、牛頭丸が声をかけた時。
「きっ・・・」
「?」
「きゃああああああっっ」
全速力で走り去った雪女だった。
「なんなんだ・・・?」
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