BOOK(牛頭雪)
□咲雪天華
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目が覚めると、やけに静かだった。
誰もいないのかと思われたが、仲間の妖気は感じられる。
では、何故?
着替えて寝床を片付け、朝食の用意をしようと部屋の障子を開けた時、その理由が明らかになった。
庭がうっすらと白く染まり、空から冬の使者がひらひらと降りてくる。
雪女は嬉しくなった。
自分の季節が、やってきたのだ。
手を出せば、その指先に結晶が吸いついて、すうっととけていく。
眷族に誘われるように、雪女は静かに地に降り立った―――。
その頃、寒さで目を覚ました牛頭丸。
あまりに冷えるので布団に潜り込んだが、一度自覚してしまっては二度寝も出来ず、仕方なく起きることにした。
隣の相棒は、呑気に熟睡中。
ここでじっとしているより、居間で熱い茶でも啜っている方がましだろう。
眠気は残っているけれど、のんびり支度をするつもりは勿論なくて、急いで着替え始めた。
廊下の冷えは予想通り。
懐手をして肩をすぼめながら歩く牛頭丸の目に飛び込んだのは、夢と見紛う光景だった。