BOOK(牛頭雪)
□手毬雪〜願〜
1ページ/3ページ
ぽん、ぽん、ぽん・・・
賑やかな屋敷の庭に、規則正しい音が響く。
「そうそう、上手いじゃないつらら」
褒められた少女は照れ笑いを浮かべて、また手を動かす。
ぽん、ぽん、ぽん・・・ぽんっ
「あっ」
少女の掌と地を往復していたそれは、爪先に弾かれて転がっていった。
「ごめんなさいっ、拾ってくる!」
追い掛けて枝垂れ桜の根元まで来た少女に、それは少年の手で差し出された。
「ありがとう、馬頭丸」
「みんなで何してるの?」
「鞠つきよ。部屋の片付けをしていたら見つけたの。一緒にやる?」
「よく分かんないけど、やる!」
のりのいい少年に微笑んで、少女はつと顔を上げた。
「あなたも来ない?」
「・・・けっ」
返ってきたのは、予想通りの不機嫌そうな声だった。
.