BOOK(牛頭雪)
□滴る雫は
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轟音が響き渡る。
地面はぐらぐらと揺れ、辺りが熱気に包まれる。
舞い上がる土埃の中、つららは一つの影を見つけた。
「牛頭丸っ!」
うずくまる彼は満身創痍。
肩で息をして、突き刺した刀に凭れていた。
慌てて支えてやると、掌にぬるりとした生暖かい感触。
「――どいてろ雪んこ…。お前が敵う相手じゃねぇ」
牛頭丸は立って青眼に構えるが、足元は覚束ない。
内側から染み出す液体が、着実に彼の着物を濡らしている。
「ダメよ!少し休んで――」
「黙ってろ」
低い声の調子につららは思わず口を噤んだ。
「若頭っつうのは、いつだって負けちゃいけねぇんだよ。絶対にな」
滴る真紅の雫がその証。
闇の中へ飛び出して行く牛頭丸に、つららは止める言葉を持たなかった。
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