BOOK(牛頭雪)
□陽光-hikari-
1ページ/5ページ
山の朝は涼しい。
特に若い草木が強く香るこの季節は、つららも好きだった。
朝餉にしようと笊(ざる)に集めた山菜を抱えて、野道を進む。
嫁入り先のこの生活にも、すっかり慣れてしまった。
腹をすかしているであろう、なかなか気のいい武闘派の面々を思い浮かべて、つららは一人微笑んだ。
少しだけ開けた木々の間からは、靄のかかった峰が見える。
なんとも幻想的だ。
しばらく歩くと、鳥たちの鳴き声に混じって、違う音が聞こえてきた。
水の音だ。
つららは導かれるように、足を進めた。
.