BOOK(牛頭雪)
□勘違いしてんじゃねぇよ
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関東は妖怪任侠総元締、奴良組。
この日も家事に勤しむ白い着物の娘が一人。
そして、それを枝垂桜の上から眺める少年は二人。
「毎日毎日、ご苦労なこった」
そう言う牛頭丸はうすら笑みを浮かべている。
「牛頭丸、声をかけてあげたら?」
「なんでオレが」
横から口を出す馬頭丸に、牛頭丸はダルそうに返す。
「だって、雪女のこと、好きなんじゃないの?」
「はぁ?馬頭丸、てめぇ何言ってやがる」
牛頭丸はあからさまに眉根を寄せた。
「なんでこのオレが、あんな女のことなんか」
「えー?いつも見てるじゃん」
「視界でうろちょろされたら、誰だって気になるだろうが」
そう言ってるそばで、当の娘、つららは見事なこけっぷりを披露していた。
「すごい努力家だよね〜」
「弱いくせにな」
「料理も美味しいし!」
「凍ってるがな」
一刀両断の牛頭丸に、馬頭丸は大きくため息をついた。
「もう、少しは素直になったら?」
「だから、素直も何もねぇって言ってんだろ」
「またまたー。恋って楽しいと思うよ?」
「ハッ」
牛頭丸は鼻で笑う。
「くだらねぇ」
そして、つららがいた場所を冷たく見据えた。
「愛だの恋だの、強さの枷になるだけだ。勘違いしてんじゃねぇよ」
《後書き→》