BOOK(牛頭雪)
□甘酒
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奴良組と言うのは、妖であるくせに、とにかく楽しいことが大好きな連中で。
飲めや歌えのどんちゃん騒ぎができるなら、口実はなんでも良かった。
それが例え、乙女の成長を願う桃の節句で、男子である当主のリクオには関係ないことだとしても、皆みな大して気にはしなかった。
特別に甘酒が振る舞われ、妖たちは揃って舌鼓みを打つ。
その中に、牛鬼と共にたまたま本家を訪れていた牛頭丸と馬頭丸も加わっていた。
「ぷはーっ。牛頭丸、甘酒っておいしいね!」
既に頬を赤らめつつ、一気に飲み干した馬頭丸。
牛頭丸はフン、と鼻を鳴らす。
「こんな甘いもん、酒じゃねぇよ」
とは言いながら、着々と甘酒を胃に収めていた。
「牛頭丸、馬頭丸!」
料理を運んでいたつららが声をかけたのは、馬頭丸が何杯目が知れない甘酒を二つ、給仕の妖から受け取った時だった。
「本家預かりじゃないからって、酔っ払ってハメを外したりしないでよ!」
「こんなガキでも飲める酒で酔うかよ」
「大丈夫、大丈夫!雪女は心配しないで〜!」
牛頭丸は馬頭丸から甘酒をかっさらい、空いた手を馬頭丸はつららに向かって振る。
それを一瞥して、つららは給仕に戻った。
甘酒はみるみる減っていく。
宴もたけなわ、大広間の盛り上がりは最高潮に達していた。
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