BOOK(過去拍手)
□牛にご注意
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何が起こったか、分からなかった。
いつも人を小馬鹿にした笑みを浮かべている男の顔が、今目の前にある。
相変わらずの仏頂面だけど、何か言葉を発する訳でもなく、私の頬から耳、首筋にかけて触れてくるものだから、くすぐったいったらない。
「ちょっと、どいてよ・・・」
空いた手で彼の肩を押してみたけど、びくともしない。
(どうしよう・・・)
自分の何が、彼の気に食わないのか。
いや、そもそも謝罪されるならまだしも、これでは理不尽ではないか。
「・・・そんなに、・・・のか」
「え?」
ちゃんと聞き取れなくて困惑する私に構わず、牛頭丸はさらに顔を近付けてきた。
「―――――――――」
思わず目を瞑った私の耳に囁かれた言葉・・・。
たっぷり数秒を経てそれを理解した時、腰が抜けてへたり込んでしまった。
「じゃあな、雪んこ」
牛頭丸が去ってからも、私はしばらくそこを動けなかった。
「雪女?どうかした?」
「・・・な、な、・・・・・・っ」
「?」
(なんなのぉ〜〜〜っ)
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