BOOK(過去拍手)
□他の誰でもなく
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みちのくの
しのぶもぢずり
だれゆゑに
みだれそめにし
われならなくに
牛頭丸は池のふちを歩いていた。
特に何をするでもない。
ただ、本家(ここ)ではまともな修行は出来ないし、かといって黙っていても落ち着かないからだ。
馬頭丸が「ボクも行く」と言っていたが、うるさいので放っておいた。
ふと、視界に雪女が捉えられた。
しかも奴良リクオも一緒にいる。
相変わらず、ムカつくくらいにじゃれあっていた。
牛頭丸は本家が嫌いだし、リクオも認めたくなかった。
けどーーー。
「リクオさま!大好きです!!」
・・・その時馬頭丸は、見てしまった。
牛頭丸の後を追っていたら、彼が不自然に動きを止め、足を出したと思ったらそこは水面で、派手な音をたてて池に落ちた、その一部始終を。
「牛頭丸、大丈夫!?」
びしょ濡れの彼が顔を上げると、リクオや馬頭丸がそこにいた。
もちろん雪女も。
「あなた、いつも私に不満たらたらのくせに、自分こそ修行が足りないんじゃないの?」
「・・・誰のせいだと思ってやがる」
呟いたつもりのそれは、相手にしっかり聞こえていたらしく、怪訝な顔をされた。
「何言ってるの?自分のせいでしょう」
いや、違う。
違うんだ。
おかしいのは・・・。
お前のせいだ。
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