BOOK(過去拍手)
□約束
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月は雲に隠れ、冷たい風が障子をカタカタと鳴らす。
夜も更けた頃。
気怠い体をどうにか動かして、彼の首に抱きつく。
普段は隠れているけれど、こんな時にはちゃんと自分を受け止めてくれる、この逞しい胸が好きだった。
はぁ、と首筋に熱い息がかけられた。
「明日、帰るのね」
「・・・あぁ」
彼が本家に顔を出して三日。
議論に時間がかかっていたようだが、それが済んだならいつまでも残る訳にはいかない。
頭では理解していても、心が拒否する。
「次はいつ会えるかしら」
「さぁな」
思わず眉を顰めた自分を彼は強く抱きしめて、耳元に口を近付けてきた。
「俺んとこに来い。そうすりゃ、そんな心配しなくて済む」
「それって、いつになるのかしら」
つい言葉を返す自分の髪を、彼は優しく撫でる。
「そう遠くはないさ」
「三行半なんか出してきたら、呪い殺してやるわ」
「へっ、離しやしねぇよ」
そして、どちらともなく唇を重ね合わせた。
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