BOOK(過去拍手)

□確信犯
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誰もいない廊下。

「雪んこ・・・」

「牛頭丸・・・」

牛頭丸の大きな手が、つららの頬を撫でる。

常時白いその肌は、やや朱を帯びて。

互いの息遣いがやけに大きく聞こえて、鼓動は早鐘のようだ。

その距離は次第に縮まっていく。

あと少し・・・。

互いの唇が重なる、その瞬間――。

「牛頭丸ーーーっ」

「馬頭丸・・・」

牛頭丸の腕から気が抜けたその隙に、つららはステテテと走り去ってしまった。

真っ赤な顔を隠しながら。

「あのねあのねっ。明後日総会だから、牛鬼さまが来るんだって!」

「・・・そーかい」

行き場をなくした手を握り締める牛頭丸。

「嬉しくないの?」

チャキッと、嫌な金属音がした。

「・・・馬頭丸よ。てめぇとは長い付き合いだが、俺に何の恨みがある・・・」

「さぁ〜」

「一度死んどくか?」

そして、平穏な日常が一変して騒動の渦に巻き込まれた。

「待てコラ!!」

「やなこった!!」

逃げる馬頭丸を牛頭丸が刀を振り回しながら追いかけるものだから、小妖怪たちには危なくて手が出せない。

主戦力の妖怪たちももはや呆れた眼差しを向けるだけで、止めようとはしない。

やがて馬頭丸が、相棒の目を欺いて屋根上に避難したので、とりあえず命懸けの鬼ごっこは終わった。

「ふぅ、危ない危ない」

それなら邪魔をしなければいいところだが、本人には楽しいらしい。

「次はどんな風にからかってやろうかな〜」




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