BOOK(過去拍手)
□翠雨
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音もなく、全てのものが色を変えていく。
天より降り注ぐ恵みは植物に潤いを与え、人々から喧騒を奪う。
軒先から滴る水滴を見ていた牛頭丸がふと顔を下げると、丁度足元の、沓脱ぎ石のすぐそばに、小さな花が咲いていた。
「こんなところに・・・」
濡れないように注意しつつ、しゃがみ込む。
そっと青葉に触れると、そこに溜まった水が玉のようにすべり落ちた。
仲間はいない。
孤独。
絶えず打たれ続けているというのに、ひれ伏すことなく天を向く。
何かを教えられた気がして、牛頭丸は少し微笑んだ。
外は変わらぬまま。
これが止んだら、アイツに教えてやろうか。
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