種、種運命短編作品庫

□言の葉
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私だけは許してはいけない




例え彼が『彼』許しても

例え彼女が『彼』を愛しても

例えアイツが『彼』を庇っても




私が許したら
私の愛した人が
余りにも惨めじゃない?





だから…ごめんなさい





「あのっ……アイツが……お前の恋人……」


その言葉に私はカッとなった


「だから何っ!?アンタ、キラの言ってた事聞いてなかったの?あの人を責めれば、トールが帰ってくるの!?」


その私の言葉に『アスラン』とキラに呼ばれた少年が、私を凝視しているのが解った



「違うでしょっ!!だったらそんな事言わないでっ!!」



知ってしまった真実


キラの友達が……トールを手にかけた



知りたかったけど……知りたくなかった



居たたまれなくなって、走りだした私の手をアイツは握った



「違うっっ!!!言いたい事はっ……」


必死に追いかけて……アイツは言葉を探していた


「アスランの事……俺もよく知ってる訳じゃないけど……アイツも苦しんで………だからっ……」



「知ってる………」


解ってるよ
だって……
だってね………



「キラの友達なんだもん……」



「あの………俺……」


ふと、後ろから遠慮がちに声がした



そんな彼を見守る様に、金の髪の彼女は見つめていた



緊張したような顔で、彼……アスランは私を見つめる



理由は解ってる




だから…
だからこそ



私はそう言葉を告げる




「貴方の事……私はきっと……許してはあげられない……ごめんね…」




そう言うと
彼は目を細め、微笑んでいて



「うん…解ってる…」



そう言った







例えキラがアスランを許しても

例えカガリさんがアスランを愛しても

例えディアッカがアスランを庇っても




私だけは許してはいけないの





だって
トールが死んじゃった事

仕方がなかったなんて
思いたくない



トールがアスランに殺された事
許しちゃったら



トールが余りにも惨めじゃない






でもね
時々思い出すの




トールの声





『キラのトリィってさ、コーディネーターの友達が作ったんだって』



『会ってみたいなぁ……そしたら作ってもらうんだっっ』



『トリィ2号』



貴方と友達になりたいと言った


彼の『言の葉』


 
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