種、種運命短編作品庫

□プライベートジュエリー
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「しかし、何故アスランがクサナギに居るんだ?」


それは素朴な疑問


「まぁ、それは行けば解るさ」

そう言ってディアッカは苦笑する


その笑みの理由も解らず……ただ、イザークはディアッカの後をついていった








パタンと閉めるロッカーの音が響く


「……アスラン……」


漂ったヘルメット

黙ったままの彼の瞳は……何処を見ているのか解らなかった


「………アスラン………?」


スーツの袖口を引っ張って、カガリはもう一度彼の名を呼ぶ


「あっ………ああ………ごめん………」


そうして微笑むアスラン

その笑顔に力が無いことは、充分すぎる程解って……



カガリはそっと後ろから彼を抱き締めた


「っっ………」


一瞬カガリのその行動に驚く

だけど………


「泣いたって良いんだ………今泣かずに、いつ泣くんだよ………?」


堪えていた感情が

彼女の言葉一つで涙となる

ぎゅっと込められたカガリの細い腕に、アスランは身を任せる様に崩れ………



「…父上っ……父上ぇっ………うっ……くぅ……うううっ……あぁあ…」


すれ違ったままの感情

結局伝えられず、自分だけが生き残った事実

一緒に死んだなら
父の罪を被れた………?

一瞬過ったその心


だけど
だけど

彼女が止めた


『パトリック・ザラの息子』


それがこれからどれだけ自分の足枷になるか解らないのに……



『生きる方が戦いだ』


ただ……今は

今だけは泣きたかった


彼女の腕の中で

たった一人の父親の為に……



ただ泣きたいと思うのは………



我が儘なのだろうか?




 
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