種、種運命短編作品庫
□その距離を少し縮めたなら
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肩に受けた銃弾の痛み
手錠をされて、晒し者の様にロビーを歩く
どよどよと周りの声が雑音の様に俺の耳に届き
「裏切り者………」
だれかのその言葉だけがやけに耳についた
もう……前を向くことが出来ない
悲しみと痛みで押しつぶれそうで
もうダメなんだって
父と違えた俺は
心のどこかで死を覚悟した
ふと……
視線に入る赤い石
『守ってもらえ……お前、危なっかしい………』
彼女の声が聞こえた
それから
先刻の親友の声
『君は………まだ死ねない……』
何で………?
『まだ死ねないんだ………わかるよね?』
何でだろうな……
こんな切羽詰まっでいる時なのに、笑いが込み上げる
俺が死んだら……
彼女は泣いてくれるんだろうか?
俺が無事帰ったら
彼女は笑って喜んでくれるんだろうか?
知りたい
知りたいな………
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