盲音の第三譜歌

□ゴーシュ 〜不器用に〜
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「なんなのよコイツーっ! 空破特高弾!」

「サソリだな」

 とミツキは頷いた。

「いでよ敵を蹴散らす激しき水塊! セイントバブル!! 硬いですねぇ」

「なかなか苦戦してますな」

「あーもうたりぃってーの! 絶破烈氷撃!」

「まぁそう言わずにルー君」

「氷月翔閃! こんなボス戦は久々だな」

「スターストローク! 確かに久々ですわ!」

「まぁ、なんだかんだでダンジョンに入り込まなかったからな」

「ホーリーランス! 見てないでミツキも手伝ってちょうだい!」

「え? いいの? この遺跡崩れるぞ?」

 ミツキは戦闘の最初からイオンと一緒に観戦していた。念のため薙刀を持ってはいるが、戦う意思はなさそうだ。

「手加減できないんですか?」

 と、イオンが見上げてくる。

「うーん、一撃必殺の技が多いんだわ、薙刀って。それも一か所にドエラい力を注ぐやつ。この地盤が緩んだ遺跡では、全員生き埋めになるぞ☆」

「「なんとか加減しろぉおお!」」

 そう叫びながらガイとルークがサソリに吹っ飛ばされた。ミツキはやれやれと進み出た。

「生き埋めでも文句言うなよー。“某はすべてを照らす天の御光”……」

 足もとに見慣れない譜陣が浮かぶ。全員さっと身を引いて退くと、ミツキの薙刀が光を纏い、円を描いた。

「楽に逝くがいい、天誅光閃陣!!」

 ミツキが空を斬ると、光の陣は粉々に砕けて花吹雪に変わった。

 その瞬間は美しく、誰もが我を忘れて見入るほど。

「威力二分の一バージョンだ」

 ミツキが呟いてとんと着地したのと同時に、サソリはぶっ壊れて音素へ還った。

「い、今ので二分の一、なんですか!?」

 バチカル廃工場でミツキの技を見ていないイオンが素直に驚いた。

「まぁな。うむ、遺跡に異常なしだな」

「相変わらずおっかねー……」

「しかもあんなに苦戦したのに……」

「一撃だよぅ……」

「少し悲しくなりますわね……」

「たぶんミツキと比較する時点で間違ってるんじゃないですか?」

「そうですね……天性の才能だわ」

「不思議ですねぇ、あんなに強い人がどこの国家にも所属していないなんて」

「どっかに所属したら、軽く一個小隊の出来上がりじゃないか」

「確かに」

「一騎当千だもんねぇ、ミツキって」

「おーい、行くぞー。この奥に音素のすげー塊がおるからー」

 音素のすげー塊=パッセージリングであるため、一行は奥へ進んだ。

「しかし、先ほどの魔物は一体何でしたの?」

 ナタリアが首をかしげる。それに答えたのはティアだ。

「創世暦時代の魔物じゃないかしら。以前ユリアシティにある本で見たことがあるわ。ただ、こんなに好戦的ではなかったと思うのだけど……」

「神託の盾の六神将が刺激したのでしょうか……?」

「いや、遺跡を守ってるだけだったのかもしれないぜ」

「なんでもいいよぅ。もうこんなのが出ないことを祈るって感じ」

「同感ですね。まぁ、いざとなればミツキが♪」

「そうだな♪」

「最強だもんな♪」

「最強ですの♪」

「最強です」

「うん、男ども、そこへ直れ」

 とミツキが再び薙刀を取り出した。
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