盲音の第三譜歌

□リソルート 〜決然と〜
6ページ/12ページ




 タタル渓谷に無事到着した。

 美月は白い杖で草をかき分けた。……あのときもそうだったがここはミツキの足場苦戦地域リストにある。

「ミツキさん、足もとにタタル草がいっぱいですの。気を付けてくださいですの」

「ありがとうミュウ。……ついでに、地表がむき出しになった壁を見つけたら教えてくれ」

「? わかったですの」

 ミツキが四方に気配を探っていると、ルークたちの会話が始まっていた。

「前に来たときは、セフィロトらしい場所はなかったと思ったけどな」

「ええ。あのときは夜だったから、見落とした場所があるのかもしれないわ」

 アニスがにやりと笑った。

「あれぇ? 夜中に二人でこんなトコきた訳ぇ? あーやしーいV」

「……んまぁ、ルーク! ティアとそんなことになっていましたの!?」

「ちょ、ちょっと待て! なんでそうなってんだよ! そうじゃなくて前にバチカルから飛ばされた時に……てゆーかお前もいたよな、ミツキ!」

「私が参加したのは、馬車のぼったくりジジイに君らがカツアゲされている時からだ」

「ありえないから」

 そしてとどめをさすティア。

「何してるの? 行きましょう」

 ティアはミツキの手を引いてスタスタ先へ行った。

「きっつー……」

「そうですねぇ」



 しばらくすると、ガイ女性恐怖症克服イベントが始まった。

「あーっ!」

 アニスの目がガルドに変わった。

「あれは幻の『青色ゴルゴンホド揚羽』! 捕まえたら一匹当たり400万ガルド!」

「転ぶぞ」とミツキがすかさず言ったが、彼らは預言ではなくただの注意だと思った。

「大丈夫!」

 すると地面が揺れた。

「きゃう!?」

 アニスの体は崖の向こうへ。

「アニス!」

 ティアがすぐにアニスの手をつかんだが、ガイが渋った。だが頭を振ってアニスの腕をつかんだ。

「ガイ!?」

「……くっ」

 そのまま引っ張り上げて草むらへ――どうやらミツキがフォローする必要はなかったようだ。

(もともと、私がいなくても物語は進む、か……)

「ティア、ガイ……ありがとう」

「私は……それよりガイ、あなた……」

「さわれた……」

「よかったな、ガイ!」

「偉いですわ。いくら過去のことがあってもあそこでアニスを助けなければ見損なっていました」

「……ああ、そうだな。俺のせいでアニスに大事がなくてよかったよ」

「や〜ん、アニスちょっと感動V」

「ガイはマルクトの貴族でしたね。きっと国庫に資産が保管されてますよ」

「ガイV いつでも私をお嫁さんにしていいからねV」

「遠慮しとくわ……」

「そうですわよね。ガイにはミツキがいますものね」

「!」

「おいナタリア、本人の前で……」

「本人、あっちです」

 と、アリエッタが指さした方向に全員視線をやると、ミツキは杖と手で、むき出しの地表の壁をコツコツ叩きながら進んでいる。何か探しているようだが……。

「……聞こえてなくて良かった……」

「ホントだぁV アニスちゃん遠慮するねV」

「……ガイとミツキはそういう関係なんですか?」

 アリエッタが眉を寄せる。

「いえ、ミツキはまったくこれっぽっちも気付いてません」

 イオンがさらっと教えた。

「あら、青色ゴルゴンホド揚羽が……!」

 ナタリアが指さしたのは、ミツキの頭だった。髪止めのように止まっている。

「はぅあ!? ミツキ! 動いちゃダメ!」

「?」

「頭にアゲハ蝶が止まっているわ」

「? ああ、ホントだ」

 するとミツキはそっと髪からアゲハを指に移した。アゲハが逃げないことに驚いていた一同。

「まぁ、大人しい蝶ですわね」

「普通逃げるんじゃ……」

「敵意がなければ逃げん」

 と言って、蝶を宙へ放ってやる。アニスが声を上げた。

「あーっ! もったいない! どーして逃がしちゃうの!?」

「ガルドなら稼げばよろし。それよりミュウ、ちょっとおいで」

「みゅ?」

「ここをアターック」

「はいですの!」

 無事に抜け道にはいり、ミュウウィングを獲得した。

「うわ、ミツキの言う通りだ」

「マジだったんだな……」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ